「子どもを寝かしつけるときにどんな工夫をしていますか?」という質問に対して、日本で一番多く聞かれた答えが「絵本を読み聞かせる」でした。ご存知の方も多いかと思いますが、子どもの絵本には怖い話が少なくありません。京都大学の正高信男先生によると、子どもを怖がらせて、早く眠りに就かせるのには怖い絵本が活躍するといいます。また、正高先生が言うには、泣きわめく赤ちゃんを不快な環境に連れて行くと、ピタリと泣き止み、すぐに眠ってしまうようです。赤ちゃんや子どもは、"怖い"とか"嫌な"状況から本能的に逃げる術を知っているといいます。「真っ暗で怖い。お化けがでる」と思えば自然に眠れるというわけです。
現代日本の子どもたちを取り巻く夜の環境は、彼らを眠りに誘う要素が少ないどころか、かえって覚醒を促す要素の方が多いのではないでしょうか。昨今の便利な都市生活では、昼と夜の区別がつきにくくなっており、本来ヒトとしての体内リズムが狂うという障害が、日本でも数多く報告されるようになってきました。もちろん、大人だけではなく子どももその影響を強く受けていることがわかっています。
ヒトは生まれたときから朝の陽の光を浴びて、しっかり昼間覚醒し活動することで、睡眠覚醒のリズム、ホルモンのリズム、自律神経のリズム、からだのリズムを覚えてきました。そして、規則正しい生活は、日中のやる気や集中力を上げ、子ども本来の能力を十分に発揮させ、社会性や情緒を育てるのです。「子どもの早起きをすすめる会」では、睡眠覚醒リズムがいかに子どもの発達に影響を与えているのか、子どもたちがさわやかに朝起き、日中大活躍ができる社会を創るにはどうしたらよいのかなどについて、意見や情報交換を行っています。この会では、朝早起きをし、日中によく遊び、夜は疲れて自然と眠くなるという自然なからだのリズムを、子ども自身が獲得できるように、母親や父親に対して積極的な環境作りを呼びかけています。
日本の場合に限ると、とくに母親の生活と子どもの睡眠の関係が明らかになっています。大人の生活が、子どもの睡眠や脳の発達に影響していることを肝に銘じて、今もう一度、大人たちに向けて、生活スタイルを見直す提案をしていかなければならないと強く感じます。 |